中村憲吉歌碑

中村憲吉寓居

昭和九年五月五日、アララギ派の代表的歌人中村憲吉はこの寓居で四十六才の短い生涯を終えた。平成九年、終焉の家の修復が成った。十年、尾道市制施行百周年を記念し歌碑三基を建て、また療養中の二首を陶板に刻み、旧居白壁の塀に埋める。

歌碑三首

岩かげの光る潮より風は吹き

幽かに聞けば新妻(にいづま)のこゑ  「林泉集」

秋浅き木(こ)の下道を少女(おとめ)らは

おほむねかろく靴ふみ来るも  「馬鈴薯の花」

おく山の馬棚戸(ませど)にくれば霧ふかし

いまだ咲きたる合歓(ねむ)の淡紅(うす)はな  「林泉集」

第一首は新婚当時、夫人の郷里、鞆での作。第二首は上京後、三年目、お茶の水での作。第三首は郷里布野での作。

白壁陶板の二首

病むわれに妻が屠蘇酒をもて来れば

たまゆら嬉し新年にして

病む室の窓の枯木の桜さへ

枝つやづきて春はせまりぬ

武蔵野・多摩MTB散歩