海を渡った奇跡の鳥居
青森県八戸市大字鮫町45 巌島神社(弁天島)
昔の人のように「地球はテーブル状になっていて海はその端から滝のように流れ落ちている」とはさすがに思わないけれど、海の流れは栓を抜いた風呂桶のように中心に向かって吸い込まれていくと、漠然と思っていた。
海難に遭って海の藻屑となった人や物は、そうして深い海の底に沈んでいくのだと。
だからある時、カナダやアメリカの西海岸に東日本大震災に関係があると思われる漂着物が大量に流れ着いているというニュースを耳にした時、なんだかとても救われた気がした。故郷を離れ、漂流して果てしない海の広さに絶望したとしても、いつかは陸地に、人のいるところに流れ着けるのだ。
そうして実際にアメリカ西海岸に部材の一部が流れ着いて戻って来た鳥居が、八戸市大久喜漁港の弁天島に再建されている。
厳島神社に建つ3本の鳥居のうち手前の2本に、再建に尽力した「Portland Japanese Gaeden」の名が記されている。3本目は震災後の平成25年(2013)に再建されたものだ。
震災で多くのものを失ったとしても、いつかはそれが帰って(返って)来るかもしれない。そういう希望を持っていこうと思う人たちを、海を渡った奇跡の鳥居は励ましてくれている。