赤い絲のモニュメント
青森県青森市安方1-1 青い海公園
わたしが学生の頃はまだ青函連絡船が運行していて、北海道旅行の際には「上野発の夜行列車」で朝青森駅に降り立ち連絡船で津軽海峡を渡った。青函トンネルが開通して連絡船が廃止されたのは昭和63年(1988)だったけれど、それ以前に北海道への旅は飛行機が主流になっていたので、社会人になってから乗ることはなかった。
昭和52年(1977)に大ヒットした「津軽海峡・冬景色」(※)は平成29年(2017)のNHK紅白歌合戦でも紅組のトリに歌われるほど長く親しまれているが、今の人たちはどんな気持ちでこの歌を聞いているのだろう。
トンネルや飛行機で越える海峡にはこちら側もあちら側もなく、ここまで、ここからという区切りも両者を分かつ隔たりも無い。そこにもう物語は生まれないのではないかと思ってしまう。
対岸に最後の連絡船「八甲田丸」を望む青い海公園に、かつて連絡船が結んでいた青森と函館の絆を赤い糸に託して表現した「赤い絲のモニュメント」が建っている。青函トンネルでつながった今、さらにその絆を強めて連携していこうという思いを込めて、二人の足は赤い糸でぐるぐる巻きにされている。
もう津軽海峡には悲しい別れとか運命の出会いとか、そういう演歌の抒情は無いのだ。どこかにいるかもしれない運命の人というロマチックな話ではなく、もう一緒になる相手は決まっていてあとは共に手を携えて幸せになる道を歩んで行くだけ。ぐるぐる巻きにはそんな思いが込められているのかな、と思った。
※ 「津軽海峡・冬景色」 作詞:阿久悠。作曲:三木たかし、歌:石川さゆり
八甲田丸の側に歌碑があったのですが、見そびれました