弘前忠霊塔
青森県弘前市西茂森1-23 禅林広場
「岩木山」と「岩手山」を間違えてしまうことがある。
名前が似ているというだけではなく、隣接する青森と岩手それぞれの県の最高峰であり、ともに地域のシンボルとして「津軽富士」「南部富士」と富士山になぞらえた名称で愛されているところも共通している。
啄木が岩手山を望んで「ふるさとの山はありがたきかな」と謳ったような思いを、青森(津軽)の人たちも岩木山に抱いていることだろう。
その岩木山を望む禅林広場に戊辰戦争以降日露戦争から太平洋戦争へと続く幾多の戦争での戦没者を慰霊する忠霊塔が建っている。
ここに眠る兵士たちの多くは、遠く太平洋や中国大陸の地で、いつかは帰りたい故郷の思い出として父母、妻子、友人の姿と共にこの岩木山を望む風景を思い浮かべていたに違いない。
ふるさとの山を前にして、生きて帰れなかった彼らの無念を思うと胸に迫るものがある。
今日は長崎の原爆忌だ。広島・長崎、沖縄、あるいは東京をはじめとする各地の空襲など語り継がれる民間人の戦争被害に対して、兵士たちの物語は何か性格の違うものとして声高に語られること無く除けられているような気がする。
彼らも同じ戦争の被害者なのだということを、この景色は伝えようとしているように思えた。